1965年3月に東芝レコードからデビューした奥村チヨは、キャッチフレーズが”和製バルタン誕生”というものだった。デビューを目前にしていた17歳の時に、音楽雑誌で「’65のホープ登場」と題してこう紹介されていた。
奥村チヨは、その容姿といい、歌い方といい、また年齢といい、今人気絶頂のフランスの新星シルヴィ・バルタンによく似ていることから、日本のシルヴィ・バルタンと呼ばれています。もぎたてのレモンのようにフレッシュで、妖精のような、思わず抱きしめたくなってしまうような不思議な魅力をただよわせ、今まで我が国になかった得難い個性の一人として、その将来を大いに嘱望されています。
フランスの妖精といわれたシルヴィ・バルタンの「アイドルを探せ」は、日本でも1964年の晩秋から翌年にかけて大ヒットしていた。
それに続くシングルとして1965年3月にリリースされた「私を愛して(Car tu t’en vas)」は、原曲がアメリカのカントリー・ソング「”Since You Don’t Care」だった。
シルヴィ・バルタンはフランスの若者たちの間で人気が高まっていたアメリカン・ポップスや、ロックンロールをカヴァーしてブレイクした歌手だった。1963年にはカントリーの聖地といわれたアメリカのナッシュヴィルに行き、エルヴィス・プレスリーのレコーディングメンバーを使ってアルバムを制作している。
「アイドルを探せ」はその中の1曲で、アメリカのカントリーとロックンロールがフランス語と結びついて、つまり異文化のミクスチャーから誕生したフレンチ・ポップスといえる。
そんなシルヴィ・バルタンの最新曲を奥村チヨは日本語で、デビュー・シングルでカヴァーしていた。そのことについて当時のディレクターだった草野浩二は、「私を愛して」のほうがA面だと思って制作したと語っている。
しかし、奥村チヨが自らの個性をほんとうに生かすことが出来たのは、1967年にベンチャーズ作曲の「北国の青い空」を歌ってからのことだ。ベンチャーズのインストゥルメンタル曲を歌うことの難しさについて、奥村チヨはこのように語っていた。
私が歌うために書かれた曲ではないので難しくて。音域も広過ぎて広過ぎて。でもこの曲を歌いたいがために、毎日練習しました。デビューから10年くらいは忙しくて、毎日睡眠時間が2時間くらいだったんですけど、それでも寝る時間を削って練習しました。
奥村チヨの言葉を裏付けるように、アレンジを手がけた川口真がこんな解説をしている。
元はインストだからそのままのメロディだと音域が広すぎて歌えないので、補作しました。ただ、これは僕の力というよりは、ベンチャーズのメロディが歌謡曲の歌になるものを持っていたんだと思います。だからそれを歌にするための細かい作業はやりましたけど、まあこれがうまくいったから、それ以降ベンチャーズものは全部頼まれるようになりました。
アメリカ人が書いたメロディとエレキギターによるサウンド、日本の風景を思い起こさせる叙情性を言葉にした橋本淳の歌詞、そこに命を吹き込んだ奥村チヨの歌声、そしてベンチャーズのメロディが持っている”歌になるもの”を、アレンジによって歌いやすくして魅力を際立たせた川口真。
ベンチャーズ歌謡とは、いくつもの才能が結びついて、異なる文化のミクスチャーとして1960年代に誕生したものだった。
そう考えると1965年の「二人の銀座」(和泉雅子と山内賢)を筆頭に、渚ゆう子の「京都慕情」「京都の恋」、欧陽菲菲の「雨の御堂筋」などのヒット曲がすべて、タイトルに地名が入っていたのも偶然ではないことがわかる。
ちなみに「北国の青い空」も、発売当時のレコード・ジャケットには英語で、「HOKKAIDO SKIES」と北海道であることが打ち出されていた。
もちろん、それらのすべてをアレンジしていた川口真こそが、ベンチャーズ歌謡にとって陰の立役者だったのである。

チヨとベンチャーズとレオ・ビーツ
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